「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」50周年記念エディション(スーパー・デラックス)

恐らく殆どの方がお聴きになったでしょうこのエディション。
余りのヴォリュームに、テイク違いや曲ごとの分析などには今後大分時間がかかるでしょうが、改めてこのアルバムの凄さがわかった気がします。
イントロ的な意味合いを込めて、印象を書いて観たいと思います。

1.これまでの定説について
《'Sgt. Peppers...'と'Abbey Road'、どちらが名盤か》
これまで沢山の和英含めた書籍・雑誌を読んで来ましたが、大方の評価は、こういうものでした。

(定説)Sgt...の一曲一曲は小品で曲単独ではあまり魅力がない一方、Abbeyの方は名曲揃いである

果たしてそうかな?と改めて思いました。今回の発売で一曲一曲の楽器の分離が良くなった結果、Abbeyに決して引けを取らない位になりました。
恐らく、1966年の技術vs1969年の技術だった可能性が高い気がします。この期間の録音レベルの進化は凄まじく、たった3年でも格段の違いがこれまではあったのですね。

今回の"Lucy In The Sky..."のイントロのキーボードなんて、キーボードに見立てた一音一音ごとの左右での分離には本当にぶったまげました(是非ヘッドフォンでご堪能ください)。

《'Sgt. Peppers'は「トータル・アルバム」ではない》
(定説)レコーディングが進んでいくに連れ次第に「後付け」の手段としてオープニングとエンディングにタイトル曲をつけて、「あたかも」トータル・アルバムを「演出した」

これも恐らく違うでしょうね。今回レコーディング順に収録されたディスク2、3を聞いていくと、"Strawberry Fields..."と"Penny Lane"を含めた収録曲15曲のうち、早くも5曲目でタイトル曲が出てくるのです。1966年11月24日から翌年の4月21日まで、約6ヶ月の長期に亘り続けられたレコーディング・ミキシング作業でしたが、1967年の2月1日のタイトル曲のレコーディング時には、アルバムの方向性は見えていたことになります。その後2ヶ月かけて曲をレコーディング。
そして3月30日に、下記のアルバム・カバー・フォト・セッションが行われますが、この日には最後から2曲目の"With A Little Help..."をレコーディングしています。4月1日には最後の曲「タイトル曲のリプリーズ」をレコーディングし、この後約3週間、ミキシングに費やされるのですが全体の流れる様な作業は見事なものです。

2.次々に導入される新技術・新楽器の応用
もちろん事前の"Love You To"で初導入されたのですが、ジョージのタンブーラ、昔からルイソン本等でわかってはいたことです。
今回聴いた印象で強かったのが、インドの香りは全くしないけど、実はタンブーラが重要な曲の印象を決めている"Getting Better"の直後に、もろインドの香り満載の"Within You WIthout You"が製作されている点です。つまり、この間スタジオにはずっとタンブーラがあった...「相乗効果」もしくは「波及効果」なんでしょうね。繋がりが良くわかった箇所の一つです。

3.これまでのステレオ・ミックスの重要性について
今回の作業は、ジャイルズ・マーティンの「モノ・アルバムこそ彼らの求めた音であり、モノをステレオ化」するという基本コンセプトの下に進められた、と聴いていますが、何か中途半端な感じがしませんか。
と言うのも、モノがステレオよりピッチが早くなっている曲のスピードをモノに合わせたのは理解できます("She's Leaving Home")が、「リプリーズの前の鶏〜汽笛の部分」をステレオに合わせたのはなぜ?。
結果、従前のステレオ・モノを折衷した中途半端な作品になってしまったのは残念です。これまでの盤は大事にしましょう。

4.最後に
細かいことは実はどうでもいいのです。今回の怒涛の様な初出音源を聴いていて実感できたのは、「4人の仲の良さ」。
シンプルにこれだけが大事だったのですね、彼らには。

P.S. "A Day...”「あう〜ん」ヴァージョンでなくて本当によかった(笑)
  真剣に練習を重ねる彼らが愛おしくてたまりません(ちょっと聞こえる女性の声がヨーコに聞こえるのは気のせい?)。
  正規盤最後のコーダ部分で聞かれる椅子の「ギシギシ」もたまらなくツボですし、同曲Take2で走っちゃうリンゴも可愛い。

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